あなたは一曲を完成させるのにどれくらいの時間を使っているでしょうか?
1ヶ月?2週間?3時間?5分?
人生の時間は有限なので制作期間は短いに越したことはありませんよね。
ここで多くの方が「数をこなす内に制作スピードを速くしよう!」と考えがちです。
しかし今回は「いついつまでにこの曲の作業は終わりにしよう!」といった感じで
短期間の、具体的には長くて一週間の締め切りを設けて制作した方が
結果としては楽曲クオリティが上がり、成長も加速しますよ!というお話です。
理由を3つに分けてお伝えいたします。
・理由その1、曲を覚えてしまわないようにするため
自己満足に終わらない楽曲を作りあげるためには、
リスナーの目線に立って制作することが必要不可欠です。
そして当然ですが、完成したあなたの楽曲を耳にするリスナーは、
先の展開を知らない状態で聴くことになります。
しかし制作に長い時間をかけ、自分の曲を何度も聴いていると、
常に先の展開が分かった状態で作ることになってしまい
・意図しない違和感がないか?
・退屈な曲になっていないか?
・転調などのギミックが効果的にはたらいているか?
などといったことが正確に判断できなくなってしまいます。
理由その2、長期間に渡る試行錯誤は、解決の可能性が著しく低いため
まず、制作の実作業においてあるべき試行錯誤というのは、
「創造」ではなく常に「選択」です。
「選択」の解決方法は単純に「可能な範囲で選択肢の全て試してみる」しかなく、
意外と時間はそこまでかかりません。
それに対し「創造」の試行錯誤、
すなわち「作品のためのアイデアを発想する」という行為は
どうしても日々の経験や研究がモノを言い
いざ作曲の実作業を始めてからココを考えるのは一手遅く、
ゴールが見えない状態での作業になってしまうので
「いつまで経っても曲が完成しない」という失敗の元です。
創造のプロセスについて、参考になる書籍を紹介しておきます。
ちなみに根本のアイデアはあるにもかかわらず、試行錯誤が
長期間に及んでしまうケースは以下の理由が考えられます。
解決策も併記しました。
・何かしらのトラブルが発生しているが、原因または解決法がわからない
ここが変だから直したい!曲をこうしたい!という理想に対し、知識や技術が追いつかないことがあります。
さあここで音楽理論の登場!と言いたいところなのですが
音楽理論は既存曲の解釈、分析に特化していて「理想を叶える」のには不向きという性格があります。
トラブルから必要な理論知識を検索できる媒体があれば音楽理論ももう少し親しみやすい印象になると思います。
解決策:諦める(人に任せる、指摘してもらう)。
・挑戦的な要素の割合が大きすぎる
実験的な要素や覚えたての理論などを盛り込みつつ
作曲することはとても大事ですが
一曲になんでもかんでも詰め込んでしまうと
完成までの時間がかかってしまい作編曲の楽しみを感じにくい上、
キャパオーバーによるギブアップのリスクが高まります。
解決策:挑戦的な要素は1つまで、その他の部分は今までの作風や伝統に習う(ベタな感じに作る)。
理由その3、意図しない「こだわり」を持たないようにするため
同じ曲と長く付き合っていると、必ずと言っていいほど
当初の制作意図とは異なる、「こだわり」を持ち始めてしまいます。
「このメロディは曲に合ってるか微妙だけど、よくできてるから変えたくない。」
「ギターソロの入り、歌メロの末尾とちょっと喧嘩してるけど、かっこよく録れたからな…。」
別にチャチャっと作り直してしまえばいいんですが、なぜか腰が重い…。
似たような経験ありませんか?
そもそも創作活動において「こだわりを持つ」ということは、よくないことであると断言できます。
各種メディアでアーティストを紹介する文として
「〇〇を〇〇することにこだわっている人物である」という
表現をたくさん見かけますが、きちんと分析してみると
・ブランディング戦略
・理想形までの最大効率を出せるプロセス
・自身の中にどうしても自然と湧き上がってくるもの
といったようなことを一行に収めるため
「こだわり」という語を使っているのであって
どれも曲を作っている最中にポッと思いつくようなことではないことがわかります。
そして意図していなかったにもかかわらず
作業中ついつい抱いてしまう「こだわり」の正体は
・耳が慣れすぎて変化に違和感を覚える(改善なのか改悪なのか判断できない)
・ここまで費やした時間、資金が惜しい
・見栄
・行動に一貫性を求める人間の本能
であることが常で、作業が長期に及べば及ぶほど強くなっていきます。
潔く切り捨てられればいいのですがそうもいかないのが人情です。
予防策としてはやはり期日を決めて作ること。
そしてこだわり発症後の対策としては、いったん曲を寝かせ、次の曲に取り掛かることです。
忘れた頃に聴き直してみると、他人事のようにあっさり修正できたりします。
おわりに
筆者は制作作業が好きで音楽をやっている節があるので
常に「無意義なこだわり」による作業の遅延と戦っております。
ですが結局のところ音楽は「聴いて楽しむもの」なので、
一曲でも多く作品を完成させ、都度の達成感と成長の足跡を積み重ねる方が
満足度の高い音楽人生になるはずです。
共に頑張りましょう。
ではまた!
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