楽曲制作とは地道な作業の積み重ねですので、5分の曲を作るためには数時間、机に向かい続けコツコツ作っていく必要があります。
しかし人間の集中力とは脆弱なもので、ひとたび疲労や誘惑に晒されてしまうとそう簡単には集中状態に戻れなくなりますし、逆に休憩を一切取らず作業に没入しすぎれば、耳と脳は冷静な視点を失うことになります。
そこで今回は、適切に集中力をキープし効率的に制作を行うための時間管理法をお伝えします。
ポモドーロテクニック概要
一言で説明すると、ごく短時間の集中作業を数回に分けて繰り返すことで、生産効率の向上を図るテクニックです。
1980年代にイタリア人起業家、作家のフランチェスコ・シリロ氏によって開発されました。
「ポモドーロ」のネーミングは、シリロ氏が愛用していたトマト型のキッチンタイマーが元のようです。
実際にこのテクニックを試す際にも、スマートフォンやPC/Mac上のアプリケーションを使用するよりキッチンタイマーなどを手元で直接操作する方が快適です。
この辺りの詳しいお話は、後日フィジカルコントローラーの項で語りたいと思います。
やり方
- タスクを一つ決め、タイマーを25分にセットする
- 25分間集中して作業する
- タイマーが鳴ったら作業途中であっても5分休憩
- 1~3のサイクルを3、4回行ったら、長めの休憩を取る
ワンポイント
・作業の途中でも25分間経ったら中断する
人のモチベーションを維持する方法の中でも、クリフハンガーはかなり強力な部類に入ります。
連続もののドラマやアニメを1話だけ観るはずだったのに、絶妙に続きが気になる終わり方で各話が締められており、気づいたら1シーズン観てしまった…という経験はないでしょうか?
このように半ば強制的に人の興味を持続させる手法を「クリフハンガー」と呼びます。
作業にもこれを応用し、あえてキリの悪い状態で作業を中断しておくことで、休憩中は余計なことへ集中が向かなくなり、タスク再開時もスムーズに作業への集中状態に移行できます。
クリフハンガーの概念は楽曲構造を理解する上でも非常に重要です。この心理作用があるからこそ、西洋音楽理論が成立していると言っても過言ではありません。
・こまめに水分補給を!
わずかでも喉が渇くと劇的に集中力が落ち、不安や緊張を覚え始めます。
飲み物は常温の水がおすすめです。甘い飲み物は血糖値が乱高下して集中力が下がるのでダメ!絶対!
・タスクジャンルを絞る、切り替える
一口に作品制作と言っても一つ一つの作業を細かく見ていくと、思考力や判断力、五感を使うクリエイティブな作業と、頭を能動的に使わない単純作業に分けられ、人間はどちらか一方のみを連続して1時間以上行うと疲労が現れてきます。
また、手弾きでのメロディやリズム打ち込み(クリエイティブな作業)をした直後に、逐一丁寧にベロシティやデュレーションを調整(単純作業)をするなど、両種のタスクを不用意に混在させると、インスピレーション、アイデアがみるみるうちに失われます。
意識的にどちらか一方のタスクジャンルをまとめて行うようにしながらも、続けて同一のタスクジャンルを行うのは2サイクルを限度にしましょう。
クリエイティブな作業の例
・作編曲
・作詞
・音色決め
・音量、定位決め
・オートメーション・カーブの追加
・オーディオ素材探し
・能動的なタイミング、ピッチ編集
単純作業の例
・トラックの整理、リネーム、色分け
・バス/ステムルーティング
・ファイルの整理(ロケーション設定、不要データの削除)
・テンプレート、プリセット作り
・プラグインの挿入
・ベーシックなタイミング、ピッチ編集
おわりに
筆者自身、何年もお世話になっているテクニックの紹介でした。
今となってはタイマーなしで締め切りと精度を保った仕事ができるのかどうか、不安にすら思っています。
簡単にできて効果も絶大なので、ぜひ一度お試しください。
ではまた。
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