今回は1962年のインストゥルメンタル楽曲「Green Onions」の紹介です。
アーティストはメンフィス・ソウル、サザン・ソウルのレジェンドであるBooker T. & the M.G.’s。
元はシングル盤「Behave Yourself」のB面としてリリースされましたが、
ラジオDJが「Green Onions」の方を好んでオンエアし、リスナーからの反響も大きかったため
すぐにA面として再リリースされました。
シンプルな編成、構成であるこの曲の聴きどころはなんといってもグルーヴです。
個々の楽器がそれぞれ独自のリズムの揺らぎを持っており、メトロノームからズレた演奏になっています。
ですので当然、個々の楽器のタイミングも全く合っておりません。
しかし全てのトラックを合わせて聴くと…思わず踊りだしたくなる見事なグルーヴになっています。
一般的に個人のグルーヴ感というものは生まれ持ったものなので、
バンドアンサンブルを最初から意図したグルーヴで(偶然を排除して)組み立てることはとても難しいものです。
そのため60年代当時、グルーヴに高い志を持っていた音楽家達は特定のメンバーでバンドを作らず、
楽曲ごとに理想のグルーヴ感を持つスタジオ・ミュージシャンを雇っていたのです。
Green Onionsの制作方式はジャム・セッションだったようなので、ヘビロテ必至のこのグルーヴは、
Booker T. & the M.G.’sメンバーの出会いという偶然と、その後の相互理解によって生まれたことになります。
ここまでの話は運ゲー過ぎて再現性皆無ですが悲観する必要はありません。
現在のDAWでは打ち込みができるのはもちろん、録音されたデータも自由に編集できます。
一人で自由にアンサンブル・グルーヴを構築できるようになったのです。
しかしその一方で、メトロノームに対し完璧に同期させることもできてしまうため、多くの音楽家から一つの大きな個性たり得るグルーヴを奪ってしまった側面もあります。全てのトラックをグリッドにぴったり合わせた楽曲は、先へ先へと急かされるような印象になり、終始緊張感が解けません。
そのためリスナーが聴いていて疲れるリスクもあります。
(楽曲構造を重視せず情報量で畳み掛けるタイプのアニソン、ボカロ曲などには効果的な場合もありますので、
一概に悪いとは言えません)
技術が進歩し、楽曲の持つグルーヴが再現可能なものになった今、改めて「Green Onions」は注目すべき作品としてその存在価値を増しています。
聴いて、感じて、作って、歌い踊って
自分にとって気持ちのいいグルーヴを探す旅に出てみてはいかがでしょうか?
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