【MDR-CD900STはちょっと待って!】モニターヘッドホンは自身の環境を考慮して選択しよう(2/3)

モニターヘッドホン導入解説編、前回はSONY社のMDR-CD900STがスタジオ・ユースの定番たる理由を明かし、導入すべき方とそうでない方について解説いたしました。

今回はそれに引き続きまして、MDR-CD900STが推奨されない方は、どのようなヘッドホンを導入すれば良いのかについて解説いたします。

前回のまとめ

MDR-CD900STに適した用法
・作業の一部で、トランジェントやノイズ監視など一要素に注視したモニタリングをする
・レコーディング時のモニタリング

「モニタースピーカー + MDR-CD900ST」「メインモニターのヘッドホン + サブでMDR-CD900ST」といったように、常に他の再生環境との併用するのが基本です。

MDR-CD900STには不向きな用法
・メインモニターとして制作の全工程、長時間に渡り使用する
・ローエンドを可視化する

ヘッドホンをメインモニターとして使用する場合のおすすめ

住宅事情や予算の都合からステレオスピーカーシステムの構築が難しい方、ヘッドホンをメインモニターに据えて音楽制作を行いたい方は開放型ヘッドホンの使用を推奨いたします。

開放型ヘッドホンとは、出力音を意図的に外に漏らし、外部の音も遮断しないよう設計されているヘッドホンのことです。
この構造によって、ステレオスピーカーと同じようにRチャンネルの出力音が右耳だけでなく左耳からも聞こえるので、自然な定位感が得られパンニングや空間系エフェクトの意思決定がスムーズに行える他、ヘッドホン独特の音像による疲労を感じにくい、ある程度俯瞰したモニタリングが可能、といった長所を備えます。
また副産物的な効果ですが、軽量かつ耳が常に外気に触れた状態になるので長時間の作業も快適です。

しかし開放型のヘッドホンは以下のデメリットも抱えます。
・音漏れと外部の音が遮断できないので自室以外での作業には不向き
・エアマイクを立てた録音作業には使えない
・適切にセッティングされたステレオスピーカーの精度と比べると、全体的に劣後する

それともう一点、メリットともデメリットとも言えるスピーカーとの大きな違いに、頭の位置を多少動かしても音像が変わらないという点が挙げられます。

おすすめ機種3選

SENNHEISER(ゼンハイザー) HD 660S

開放型ヘッドホンの中でも長らくトップクラスのクオリティを誇っていたSENNHEISER HD 650の後継機であり、メインモニターとして間違いのないヘッドホンです。
解像感、定位感といった音質面に着目すると、今回挙げる3つのヘッドホンの中ではこのHD 660Sが最も優秀と言えます。

audio-technica(オーディオテクニカ) ATH-R70x

筆者はデスク以外での作業用に、このATH-R70xを所持しています。店舗で複数のヘッドホンを試聴し最終的に先述のHD660Sと迷ったのですが、段違いに快適な装着感が決め手となりました。再生音質が最上であっても身体の方が疲れてしまっては意味がないので、ライフスタイルも合わせて考えると良いでしょう。

AKG(アーカーゲー) K240 MK II

コストパフォーマンスで選ぶならばAKGが断然おすすめです。
上記2つのヘッドホンとは設計思想が異なり、原音に対し忠実ではなく、かなり突き放した印象で再生します。このことは制作者にとって決してマイナスではなく、冷静な判断力を保つための一助となります。MK IにあたるK240 Studioは、欧米ではスタジオ標準のヘッドホンとして知られています。
MK IIは低音部の再生能力が向上しており、より現代向きであるためこちらを紹介いたしました。

おわりに

次回は、「ローエンドの可視化」ができるヘッドホンについてお話します。
すでにスピーカーを持っている方にも必見の内容となりますので、是非最後までお付き合いください。

つづく

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