ミキシングについての悩みでリアル、ネット問わず多く耳にするのは
「ミキシング教則本やプロのエンジニアが公開しているTipsを参照しているのにうまくいかない…」
「チート級のプラグインを使っているはずなのに納得のバランスにならない…」
というものです。
EQやコンプなど作業の概要は理解しているのにも関わらず、
目的のサウンドにならないその原因は
「そもそもなぜミックスをするのか、明確にしていない」である可能性が非常に高いです。
大前提を確認しましょう。
そもそも「良いミックス」って、何ですか?
正解などない!という答えはひとつの真理なのですが、もっと誠実に回答するならば
良いミックスとは、「楽曲の意図に沿ったミックス」であり、
意図に適ってさえいれば、間違ったサウンドメイキングはない
ということです。
ですから、あなたの楽曲をミキシングによって最大まで完成度を高めるには
「何を目的にミックスを行うのか」を明確にしなければなりません。
今回の記事では、ミキシングという作業を「なぜ、どんな目的で行うのか」という観点で解説します。
ミキシングを行う代表的な理由3つ
1、楽曲のメッセージ(表現したいこと)をより明瞭にするため
2、より多くの人に楽曲を届ける(好きになってもらう)ため
3、ミックス自体が音楽表現
「どれかひとつの理由が全て!」という場合は少なく、
1の理由が70%、2が20%、3が10%といったような場合が多いと思います。
以下の章では各理由の詳細を解説し、具体的な作業例も挙げて行きます。
楽曲のメッセージ(表現したいこと)をより明瞭にするため
例えばですが、ひとくちに「ロック系アレンジの楽曲」と言っても、
「歌をとにかく聴け!」なのか「ギターのリフ命!」なのか「1970年代のロックサウンドをオマージュ」なのか
表現したいことは楽曲ごと、アーティストごとにそれぞれです。
録音された音を細かい要素に分けて精査し、楽曲が持つメッセージが最大化されるよう再配置を行うことは、
ミキシングが担う大きな役割のひとつです。
〜具体的な作業例〜
・ジャンルに即したバランスを狙う
「俺の曲のジャンルはこれ!」という強い主張は楽曲のメッセージの一つです。
ジャンルごとにサウンドの傾向はかなり決まってきますので、研究の上ミックスバランスを検討します。
・主役のトラックと脇役のトラックを明確にする
頭の中でもメモ書きでも、とにかく優先順位を決定する作業を行いましょう。
・主役の邪魔をしているトラックに対して処理を行う
被っている周波数帯域をEQで処理したり、ダイナミクス処理、空間系エフェクトで距離感を調整します。
楽器の重要な帯域が被っているパート(例:ボーカルとギター)に対してはパンニングで衝突を避けます。
より多くの人に楽曲を届ける(好きになってもらう)ため
せっかくメッセージを最大限にしたとしても、
誰の耳にも止まらないような、つまらない、あるいは不快な楽曲になってしまっては仕方がありません。
マーケティング的な発想でミキシングを行うことは、60年以上前から試行錯誤されています。
〜具体的な作業例〜
・ターゲットリスナーを絞って、適切なバランスにする
現在、ポップ・ミュージックのリスナーの大多数は音楽鑑賞専用のスピーカーまたはヘッドホンを所持しておらず、スマホ + イヤホンというリスニングスタイルが主流です。
小さいカナル型イヤホンは超低音域(100Hz以下)の再生能力が非常に低いので、彼らに対して「低音がしっかりあるよい音」として楽曲を認識してもらうには一工夫必要です。
逆に、オーディオに徹底的なこだわりを持つ人をターゲットにする場合には、全く違うアプローチでミックスをする必要があるでしょう。
・既存の曲に対して見劣りしない品質にする
超低音域から超高音域までバランスよく配置し、聴感上の音量感もある程度確保します。
・チープであったり、不快な要素を排除する
ノイズやピークの除去などを行います。
ミックス自体が音楽表現
楽譜には書けない、ミックスでしか表現できない聴きどころを盛り込むのも、録音芸術においては重要です。
これらの表現に比重をかなり傾けたアーティストも存在します。
〜具体的な作業例〜
・オートメーションでのエフェクト
オートメーションで定位を変えたり、2ミックス全体にエフェクトをかけるなどといった処理を行い、
「ミキシングならではの聴きどころ」を作ります。
・アナログの歪みを付加する
昔ながらのテープやコンソールを使用することで自然と付加される歪みを再現します。
デジタルで録音された音源は、「クリアな反面情報量が少ない」という弱点を克服するためにも歪みを使います。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
感謝ついでに重要Tipsをお伝えいたします。
ぜひ以下のことを実践してみてください。
・リファレンストラック(参考音源)を改めて選ぶ
「心の底から、かつ他人にも胸を張って「良い」と言えるミックスバランスを持つ既存曲音源を何曲か持っておきましょう。」
というのはよく聞くミックス攻略のスタートラインですが、
「何を目的にミックスされたか?」という観点を持つことで単なる好き嫌いから一歩離れ、真に理想にマッチしたリファレンス音源を手に入れることができます。
それでは、あなたの楽曲がより良くなることを願っております。
ではまた!
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